本の好きな子供だったので、よく家のなかで本を読んでいた。
縁側を背中に背負って暗い部屋を向いて本を読んでいると、母親に叱られたものだった。
「よてくらがりになるから」
このよてくらがりという言葉、手元が暗くなるという意味らしいのだけれど、母親の口以外からは聞いたことがない。母親は富山出身なのでそちらの言葉なのかも知れないけれど、今ネットで検索してみたら0件ヒットだった。まさかオリジナルなのだろうか。
台所の、流しの蛍光灯が壊れた。
ひもを引っ張ってもカチンという手ごたえがなく、電気がつかなくなってしまった。ひもの根元を探ろうにも、この蛍光灯、棚の奥まった位置に設置されていて簡単にはその仕組みを見ることが出来ない。
そんな日が2週間ほど続いて(皆さんご存知でしょうが、こういうところ、わたし、非常に辛抱強い)やっとその気になったので、ホームセンターで新しい蛍光灯を買って来て自分で交換した。
交換したと一言で書いたが、実はこの部分に相当の苦労があったのだけれど面倒くさいから省略。
煌々と輝く蛍光灯の元、料理をしたり洗物をしたりしていると、この数日間いかに暗いところで作業していたのかを実感する。
何年も前に聞いた、母親のよてくらがりという言葉をこのとき思い出したのだった。