強面なので知らない人から声を掛けられるという事は滅多にない。そもそも知らない人と話すのが嫌いなのでそういう風にしているってトコロもあるんだけれど、時々こちらの思惑に気が付かない尚且つ趣向の変わった方から話しかけれることがある。
さっきマルエツで買い物をして、サッカー台で袋詰めをしていたら知らないおばあちゃんから声を掛けられた。
「そのトマトいくらだったの?」
「5個セットのヤツです」
マルエツ素人の方々の為にちょっと説明が必要なのだけれど、このお店火曜日は何種類かのアイテム5個ランダムで498円という販売をしている。特に野菜に種類が多く、火曜日はいつもごった返しだ。
「あらー、トマトなんてあったんだ。気が付かなかった」
「安いですよね」
可愛らしいおばあちゃんだったこともあるのか、今日は話しかけられたことがなんだか嬉しかった。
でもこないだは同じこのマルエツでこんなことがあったんだった。
ボビーオロゴンみたいな大柄な外国人と店内で何度も目があう。
カートを押して歩いていると、どういうわけかいつも前から現れて、相手はなにしろボビーだから目立つので目線を向けてしまい、結果目が合ってしまう。そのたびにボビーはなにやら表情を作っているような気がする。
そういえばあの日はレモンを買いに行ったのだったけれど、たまたま売り切れていた。それでほかの野菜とか肉とかを買ってレジに並んだらボビーが私のすぐ後ろに並んだ。
会計を済ませてサッカー台に向かったらボビーも同じ台に来る、こっちを見ている。
ちょっとヤバイかなと思ってなるべく急いで袋詰めをして店を出た。
そうそう、レモン。
隣にコンビニがあるので入ってみたけれど、最近のコンビニは野菜なんて置いていないのですね。店内を一周して何も買わずに店を出ようとしたら。
ちょうどコンビニに入ってきたボビーと出会いがしら。
明らかに私を見て驚いている、もう店を出ちゃうのかと顔に書いてある。
そ知らぬふりをして横を通りすぎようとしたら、耳元で「コンバンワ」とささやかれた。
相手をするのも無視をするのもいやなので、会釈をしたようにも相手をかわしたようにも見えるしぐさで曖昧に頭を下げて店を出た。
月夜の晩、すぐそばの自転車置き場が妙に遠く感じた。