招待券が当たったので先週観てきました。
物語は墓参りのシーンから始まる。
スペインにもお盆の墓参りみたいな風習があるのか、大勢がそれぞれの墓の周りを掃除したりお参りをしたり。だけどそれが全員女性ばかり。
そう、この映画はボルベール監督またしても女性が主役の、女性賛歌の映画だった。
映画が始まってしばらくは、この映画の流れに乗れなくて少し戸惑った。というのは、これはコメディなのかシリアスなのかサスペンスなのか、そして誰が主役なのかもよくわからなくて、どういう心構えで観続ければいいのかちょっとよくわかりづらい。
つまりは、不必要な説明調シーンが少なくて、ストーリーテラーもいないのですね。
実際は殺人事件とかあるし、過去のいろんな事件なども逸話として登場してくるんだけど、でもなんというか全体の流れが普通の日常の中の一こまのようにスルースルーと流れてゆく。その効果をもたらしているのが前述の説明を省いた手法なのだな。これがあまり省きすぎるとカラックスの『ポーラX』の様に難解な作品になってしまうんだけど、この映画はそこまではいっていない。親切だ。
はっきり言って、ストーリはそれほど面白くなかった。
しかし、ナニがよかったかと言って、ペネロペ・クルスの美しかったこと!
冒頭の墓参りのシーンでは髪をくしゃくしゃと結い上げて古臭いワンピースかなんかを着ていて『ブーベの恋人』のときのクラウディア・カルディナーレを彷彿とさせる。古くてスマン。
それから彼女が歌を歌うシーン。あれはこの映画の中でも最高の見所。
ちょいと低めの声で、たぶんこれは日本で言ったら民謡か演歌みたいな哀調あふるる歌なんだけど、それを熱唱する彼女の姿を観るだけでもこの映画の価値はありますよ。
それから、彼女のファッションがよかった。赤い服ばかり着ていたというのでもないのだけど、赤が印象的でした。
本人にはその気がないんだけども、性格なんかも勝気なんだけど、どうしてもどうやっても色気がはみ出てしまう女性、そんなタイプの女性が着ている服。非常に素敵。
映画のエンドロールでも、彼女の服のテキスタイルの柄がイラストになって使われているのが小粋でした。
影響を受けて、この映画の後、モエルは赤い服を2枚も買いました。
GAPとユニクロという、実に色気のないものではありますが。